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久城さんの言葉にハッとした。
何度も台本を読んで、それでも理解できなかった愛菜。
彼女はどうしてこういう行動を取るのだろう…ってただ疑問に思うだけだったけれど、
ファッションが社会情勢や流行とともに進化していくように…役の言葉、行動は…過去の歴史が作り出していくものなんだ…。
「久城さん…少しだけですけど…、愛菜に歩み寄る方法が分かった気がします。」
「…そ?」
心に差した微かな光に、じわーと体の中が熱くなる。
が、しかし…それと同時に脳の容量を占めるのは…、
「でもでもでも久城さん…っ、
愛菜の過去を演技に反映させる…なんて、今日これからの撮影ですぐ出来るわけないですぅ!どうしましょう〜!」
こんな短時間じゃ無理!という確信。
久城さんの腕にしがみついて揺らすと、「ねえ、さっきまで俺のこと怖がってたのになんなの?」と呆れた顔で返された。
「怖い、とか言ってられないんです!使えるものは苦手な先輩でも使えって感じなんです!」
「…ぶっちゃけすぎじゃない?」
焦りまくって本音を漏らす私に苦笑いを浮かべる久城さんは、ため息混じりに「しょうがないなぁ」と漏らしたあと、
「今日だけ使える裏技教えてあげる。」
国宝級のお顔にニンマリと美しい笑みを浮かべた。
嘘つき女優
ーendー
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