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「良かったね、オーケーもらえて。」
「久城さん…っ!」
コツコツと床を叩いてこちらに近づいてくる久城さんに勢いよく駆け寄ると、爆発しそうな喜びと感謝をどう伝えればいいかと胸の前で両手を握る。
「く、くじょさ、…で、できて…」
「どーどー、落ち着いて。」
吃りまくる私を笑って、ポンポンと肩を叩いてくれる久城さん。「深呼吸。」と短く指示されて、言われたとおり大きく息を吸った。
本当はあと五回くらい深呼吸しなきゃ、この胸のドキドキは治らなかったけれど、早く久城さんと話したくて、また吃りながら口を開く。
「く、く、久城さん、どどどどうでしたか?!」
「ふふ、興奮しすぎ。良かったよ。…頑張ったね?」
「…っ、う、嬉しいです、ありがとうございます…!」
「いや、クランクアップ並みに感動してんじゃん。…言っておくけど、最初のシーンが30分遅れで撮り終わっただけだからね?」
「……はっ、確かに…っ、!」
初めて演技らしい演技ができたことが嬉しくて、テンションが上がってしまったが、
周りに迷惑をかけたことには変わりないし、本当はこの演技を最初からできるように仕上げてこないといけなかったんだ。
そう思えば急に冷静になり、監督やスタッフさんに向けて慌てて頭を下げた。
「み、皆さん、ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした…、今後はこのようなことがないように…」
「こら、堅い堅い。」
「あいた!」
コツンと堅いものが後頭部に当たり、思わず声を上げると、
「冗談だから。みんな怒ってないから、そんなバカ丁寧に謝らなくていいよ。」
「…く、久城さん…」
「この感覚忘れないで、次のシーンも頑張りな?」
「は、はい…!」
優しく微笑む久城さんに、またまたきゅうううっと胸が締まった。
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