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「それにしても久城くん、どんな手使ったの?こんな短期間で。」
腕組みをしながら私と久城さんに近づいてきた監督が不思議そうに尋ねる。
ニヤリと笑った久城さんは、唇の前に人差し指を立て「えー、秘密ですよ。ねー、美波ちゃん?」と私の方を向く。
み、美波ちゃん…。
監督に言われるのはどうとも思わないのに、久城さんから呼ばれる“美波ちゃん”は中々破壊力がすごい。さすがは国宝級イケメン…。
顔合わせ会の時が印象的すぎて、苦手意識を持っていたのが嘘みたいに…。今は感謝と尊敬しかない。
久城さんに言われたとおりにしたら、少しだけ理解することができた愛菜。
愛を知らず、人を人と思っていない…癖のある女の子。
周りのことなど考えず、自分の意思だけで行動して…どんなことが起こっても…全て娯楽として楽しんでしまう。お話の冒頭の愛菜そんな子なんだ。
久城さんからの受けたアドバイス、それは、私にとっては一番分かりやすく、かつ実践しやすいものだった。
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時は15分前に遡り。
「あ、ADDICTのモデルした時の表情…ですか?」
眉を顰めて戸惑いの表情を見せる私に「そう。」と久城さんは頷いた。
「俺と監督がイメージする序盤の愛菜は、周りの意見なんか考えず、自分勝手に振る舞う女だ。そんな女はさっきのあんたみたいなキラキラした目してないでしょ。」
「…きらきら…?」
目をキラキラさせた覚えはなく、首を傾げる私に、苦く笑いながら腰を屈めた久城さんは私の方に手を伸ばし、前髪を持ち上げた。
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