Seen2 妖艶なキスシーン

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そのせいで突き出される唇が恥ずかしい。 「く、くじょーさん、離してくだはい…、!」 「ねえ、この唇、なんであんな凶器みたいに固くできんの?一難去って、すーぐ一難持ってくるね、あんた。」 「す、すみましぇん〜〜!」 せっかく久城さんのアドバイスで前に進めたと思ったのに…またもや壁にぶち当たる。 また迷惑をかけている申し訳なさと、不甲斐なさに眉を下げると、久城さんは「はぁ、」とため息を漏らしつつ、私の頬から手を離した。 「監督〜、予想通りでしたー」 「あはは、了解。今からセットチェンジで30分くらい空くから、また二人でミーティングしておいで。」 「了解」 「す、すみません…、」 私の不慣れさを察して、セットチェンジ前にリハーサル…という名の演技チェックをしていただいたのだが… 見事不合格の評価をつけられた私は、とぼとぼと久城さんの背中についていくことに。 「美波ちゃんのせいで口の中、切れたんだけど。」 スタジオを出て、楽屋へと向かう廊下を歩きながら、揶揄うように申告する久城さん。 下唇を引っ張って見せられた裏側は、確かに赤くなっていて… 「えっ?!そんな…、私、国宝をキズモノに…っ?!」 「いや、…ははっ、キズモノって…」 「す、すみません〜!本当に…、私どうすれば…っ、」 手で口元を覆って、自分のやってしまったことの重大さを噛み締めると、視線の先の久城さんは可笑しそうにクスクス笑って私の頭をポンっと撫でる。
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