Seen2 妖艶なキスシーン

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「ふふ、本当いい反応するねぇ。揶揄ってるだけだから気にしないでいいよ?」 「え、でも…」 「まあ、俺らのせっかくのファーストキスが事故チューってのは残念だけどね。」 「へ、へぇっ?!」 演技中のキスのことを“ファーストキス”だなんて、ムズムズする呼び方で表現されるとは思わず、立ち止まって顔を赤くしてしまう私。 私を置いて数歩先まで進んだ久城さんは自分の楽屋に到着し、 「ほら、時間ないんだから早くおいで?」 と、意地悪に笑った彼は確実に私の反応で遊んでるみたい。 誰のせいでこんなふうにドギマギしてると思ってるんですか…!と、言い返したかったけれど… これからまた教えを乞う身として、文句なんて言えるはずもない。 「はいっ!」と元気よく返事をした私はドアを開けて私を待ってくれている久城さんの元へと駆け寄った。 「美波ちゃん、犬みたいって言われない?」 「え?!…あ、実家で飼ってますよ?ポメラニアン。あ、お邪魔しまーす。」 「はい、どうぞ。…って、いや、そうじゃなくて…」 どうやらトンチンカンだったらしい私の返事に苦笑いをした久城さんは、楽屋の中央へと歩みを進めつつ、「なんか、健気で人懐っこいところ犬っぽいなって。」と微笑む。 席につきながら、「それっていい意味ですか?」と怪訝な顔で尋ねると、 「そりゃあ、いい意味でしょ。そんな子じゃなかったら、こうやって演技指導なんてしてあげないって。」 「…っ、」 また頭を撫でながら微笑まれた。 久城さん…頭撫でるの好きなのかな…。 男の人に免疫のない私は、いちいちドキッとしてしまうから、できれば控えてほしいんですけど。 とはいえ、尊敬する久城さんに褒められるのは嬉しい。 ドキドキするけど、本当は頭撫でてもらうのも…嫌じゃない。全く。 国宝級イケメンだし。ここは、ありがたく受け取っておくべきか…? そんなことを思っていたら「じゃ、始めようか」とあっという間に私の頭から手が退けられて…それをほんの少し残念に思った。
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