Seen2 妖艶なキスシーン

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テーブルに頬杖をつきながら、隣の席に座る私の顔を覗き込む久城さん。 「で、美波ちゃん、一応聞くけどさ。」と前置きをしてからコテンと首を斜めに倒した。 「キスのご経験は?」 「へぇっ?!」 突然のセンシティブな質問に目を開く私だったが、そんな私を久城さんは表情を変えずに見つめ続けるから…。 キスシーンを演じるために必要な質問なんだ、と理解して、ごくりと喉を鳴らしてから小さく口を開いた。 「な…ないです…。キス…も、…その、先も…」 「…」 それを言うだけで真っ赤になってしまう自分が恥ずかしい。 …だって、22歳にもなって…まだ恋愛経験ゼロ…なんて、て、てて天然記念物って言うじゃない? しかも、男の人とこんな話…したことないんだもん。 私の回答に目を点にする久城さんからの視線に耐えきれず、目を逸らしてソワソワと体を揺らしていると、 「え、…俺、キスシーンの経験聞いてんだけど。」 「…っへ?!!」 「その先…って、ふふ、どれのこと?」 「…っ、!!」 「ははっ、美波ちゃん、サービス精神旺盛すぎない?!そこまで聞いてないのに…ふはっ、」 久城さんが私の勘違いを指摘しながら破顔した。お腹をくの字に曲げて笑っていらっしゃる…。 どうやら久城さんはお芝居上での“キスシーン”の経験を聞きたかったらしいのに、勘違いして、馬鹿正直にキスもしたことない処女であることを暴露してしまったらしい。 先ほど以上にかあああっと顔に集まってくる熱。 体内に和太鼓でも入っているような心臓の爆音。 「わ、わわ忘れてください〜っ!」 「ね、本当面白いね、美波ちゃん。もうどハマり。大好きだわ〜」 「…っ、」
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