Seen2 妖艶なキスシーン

11/31
前へ
/548ページ
次へ
頬にあったはずの右手はいつのまにか顎の下を掴まれ、グイッと上を向かされる。 「顔…小さ。」 「…っ、ち、近い…」 「チューするときはもっと近いよ?」 「…ちゅ、チュー…って、」 “チュー”という言葉を口にするのすら恥ずかしくて…だって、今言ってるチューは、多分演技のことじゃないから… って、演技のこと?…え、違うよね?…えぇ? 困惑しながら視線を外すと、久城さんからフッと息が漏れた。 「こんな可愛いのに、…純情とか。」 「…っ、」 「本当に天然記念物かもねぇ…」 「んぅ……」 浮かした親指が、私の唇をなぞる。 羞恥心に涙を浮かべて久城さんを見上げると、「…ゆっくり慣れようね?」と色気たっぷりにニヤリと笑われた。 「美波ちゃん、そろそろ練習始めよっか。キス“シーン”のご経験は?」 「…っ、」 そうやって、さっきの恥ずかしい勘違いをイジるように言う久城さんは意地悪だ。 意地悪なのに、嫌じゃない。顎を持たれるのも、唇に触れられるのも…不思議と、嫌じゃない。 …国宝だからだ…。国宝級イケメンだからだ…。 私ってこんなに面食いだったの?…今までどんな俳優さんと共演したってこんなことなかったのに。 「ふ、触れるだけの…キスしか…、」 「ふーん。」 「私主導のシーンは…初めて…です。」 「そ、…じゃあさっきの事故チューも大事に貰っておかなきゃね?痛かったけど。」 「…も、…もう!い、意地悪しないでください、怒りますよ!」 「ふふ、…その反応見たくてやってるから怒っていいよ?」 「…っ、もう!」 久城さんに翻弄される。彼の色香に惑わされる。
/548ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1146人が本棚に入れています
本棚に追加