Seen2 妖艶なキスシーン

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「…っ、」 「どうですか、久城さん…、」 「…うん、ヤバい…」 僅かに久城さんの指から唇を離して尋ねると、ぼうっと私を見ながら空返事をされて、 「え?」と首を傾げると、「ああ、こっちの話。」と言いながらパッと視線を逸らした。 「そんな感じでいいと思うよ?あと、舌は…、」 「…舌?」 「…んー、まあいいや。今回は。俺が入れられてるように見せるから。」 「はあ…、」 ブツブツ言いながら久城さんの中だけで組み立っていく演技プラン。 本当は私も理解したかったけれど、時間がない今、私が口を挟む方が邪魔になると思って、自分に与えられたことだけに集中する方向に気持ちを切り替えた。 唇の力を抜く。目の演技を忘れない。口パクパクして角度変える。 それと…、 「久城さん、目を開けるのはアリですか?」 「ああ、いいと思うよ。ドキッとしたし。」 顎に手を当てて何か考え込んでいたらしい久城さんにふいに尋ねると、さらりと返ってきた返事。 あまりに何気なく返ってきたから聞き逃しそうになったけれど、久城さんの「ドキッとした」という言葉に、こちらの心臓がドキッと飛び跳ねて。 「…え、久城さん、ドキッとしてくれたんですか?」 馬鹿真面目に、聞き返してしまった結果、 「…は?……いや、ああ、拓人的にね?」 苦笑いの久城さんは困ったようにそう言った。 「…っ、ひぇ、すみません!間違えました…っ、私にかと!」 「…」 ボンっと破裂音がするほどの勢いで顔が熱くなった。 や、やだやだやだやだ、 久城さんみたいな国宝が…私みたいなひよっこモデルにドキッとするわけなんかないのに…ああああ…!
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