Seen2 妖艶なキスシーン

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ーコンコンコン…ッ 「「…っ、」」 「久城さーん、そろそろ次のシーンの撮影始めまーす。」 楽屋に響いたスタッフさんの声。 「…な、ぅご、…っ、ぅば!」 到底言葉と呼べない声を吐き出しながら椅子から飛び跳ね、部屋の隅の壁にビダンっとカエルの如く張り付いた私。 それに反して久城さんは、何事もなかったように耳の後ろを掻きながら、「はーい、すぐ行きまーす」と気怠げに返事を返す。 椅子から立ち上がった久城さんは、穴があったら入りたくて部屋の隅に身を擦り込む私を「ほらー、行くよ美波ちゃん」とお迎えに来てくれるが… 「あ、あまりの羞恥にここを動けません…!私のことは置いて、どうぞお先に…っ!」 「なーに、またふざけてんの? てか、さっきの何、“ぅご、ぅば!”って。声、ブッスだったねぇ」 「だ、だだだって、…きき、キッス、キッスが…っ!」 モジモジしながら唇を尖らせて久城さんに顔だけ振り返れば、ブハッと噴き出された。 ひっどい…!ねぇ、ひどい!! 私なんていまだに心臓バックバクなのに…!…やっぱりさっきのは揶揄われただけなんだ!そうなんだ! 「ふふ、落ち着いてよ、キッスって…はは、めっちゃウケる。」 「うう、笑すぎです!」 「…し損ねて残念?」 「…な、んな、んなわけ、なななっ…!」 首を傾げて、私の顔を覗き込んだ顔は意地悪だけど恐ろしく格好いい。 だからこそ、眼球が飛び出そうなほど目を広げて、あわあわしちゃったわけだ。そう、図星だからじゃない。決してそんなんじゃない…、じゃないからね?! 「くくっ、だから、落ち着きなよ。」 「じゃあ、からかわないでください〜!」 「ま、俺は残念だけどね。」 「…んなっ!」 さらりと放たれる衝撃発言。 頼むから、もう勘弁してほしい。完全に心臓が筋肉痛です…。
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