Seen2 妖艶なキスシーン

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「美波ちゃんは、愛菜はどの時点で拓人のことを好きになったと思う?」 久城さんの問いかけに、私はすぐに答えることができなかった。 なぜなら、何度も台本を読み返しながら、ずっと疑問に思っていたところだからだ。 「最初は…愛菜は拓人に一目惚れしたんだって思ってたんです。…でも、バーで拓人に出会うシーンを演じてみて…何か違うなって感じました。」 「うん、…それで?」 「相手を挑発するように駆け引きを楽しむ愛菜は…一目惚れして相手に媚を売るような人じゃないな…って、 …でも、すみません、やっぱりまだ私の中で答えは見つかってなくて…」 モヤモヤと霧がかかったその先にいるような愛菜の感情。もう少しで手が届きそうなのに、理解できない自分がもどかしい。 表情を曇らせる私に久城さんは優しく笑って、ゆっくりと落ち着く声で語りかける。 「大丈夫。自分だけの力で全部を理解しようとしなくてもいい。さっきみたいに俺がサポートするし。」 「…はい、」 「でも、考えることだけはやめないこと。…愛菜に寄り添って表現できるのは、監督でも俺でもない。…美波ちゃんだけだからね?」 「…私、だけ…」 何を考えているのか分からない、自由奔放、自分勝手…そんな台本の中の愛菜が理解できなかったし、…正直好きになれなかった。 でも、久城さんの言葉によって、彼女を演じることに対する“お仕事”以外の責任に気付かされた。 好きとか嫌いとか…私の感情なんか関係ない。 私が彼女を演じなければ、表現しなければ…、愛菜という人間は、この世に存在することすら出来ないんだ。
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