Seen2 妖艶なキスシーン

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『…なんか、用ですか?こんなところで待ち伏せるなんて。』 『あなたがトイレに行くのが見えたから。着いてきちゃった』 『…ナンパですか?俺、そういうのに引っかからないから、他探せば?』 『へー、慣れてるんだ?』 先ほどと違うセット。セリフは同じ。 腹の探り合いをするような拓人と愛菜の張り詰めた空気感。 それを崩して、先に仕掛けるのは愛菜の方。 それまでのじんわりとした攻防戦に変化をつけるように拓人の胸元のシャツをグイッと引き寄せる。 『…じゃあここまでしたら?』 冷めた瞳で…でも口元はゆったりと微笑み… 『…っ』 そっと彼の唇に口付ける。 柔らかく、少し冷たい唇に自分のものを押し付けて、それから角度を変えて拓人を味わう。 二人はお酒を飲んでいるから、きっとこのキスはお酒の混じったものなのかもしれない。 拓人の辛口のテキーラと、愛菜の甘口のカクテルが口の中で混ざり合う。 薄目を開けて彼を見れば、拓人もこちらを睨むように見つめていた。 それを見て、愛菜はニヤリと目を細め、さらに激しく唇をつなぐ。 愛とか情とか…そんなものではない、ただ相手より優位に立つためだけの牽制のキス。 『…』 『…』 ゆっくりと唇が離れて、見つめ合う。 『…なにしてんの?』 眉間にシワを寄せて、怪訝そうに聞いてくる拓人。 普通ならこんな顔されればショックを受けても仕方ないんだろうけど… 今まで色んな男を手玉に取ってきた愛菜は、キスをしてもなお、自分に靡いていない拓人を“面白い”と感じるのかもしれない。 愛菜は拓人を好きじゃない。 愛や情じゃない。 拓人の頬に手を伸ばす。 渇望するように、懇願するように、 『あなたが欲しいの。』 “久城さんから、女優としての【信頼】が欲しい” いつか、いつかきっと…必ず。 足を引っ張るだけの存在でなくなりたいの。
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