Seen3 初めてのレッスン

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「だ、大丈夫です!外暑かったし、少し緊張してなかなか汗が引かないだけなので!」 両手でパタパタ顔を仰ぐ私を珍しそうに見つめながら掴みかけたリモコンをコトッとテーブルに置き直した久城さん。 「ふーん…なんで緊張?まさか男の家に上がるの初めて…?」 なんて、分かりきった質問をされれば、逆にどう答えればいいのか困ってしまうってもんだ。 恋愛経験ないって言ってるんだから、当然、男の人の家に上がったことがあるわけがないじゃないか。 黙って赤い顔で俯くと、久城さんは「へー、男友達とかもいないんだね。さすが天然記念物。」とおちょくるように笑う。 「モデル仲間と遊ぶ時も外で遊ぶことばかりで…誰かのお家に来るの自体、小学生の時のお泊まり会以来なんです…」 「へぇ…」 「だから、…緊張くらいしますよ、それに…芸能界の大先輩のお宅ですし…」 ボソボソと口を尖らせて言い訳を並べる私に久城さんはどうでもよさそうに「ふーん」と相槌を打って。 ギ…とわずかな音ともにソファーの座面が沈んだと思った瞬間、彼の気配がグッと近づいた。 「ふーん、…じゃ、せっかくだし小学生以来のお泊まり…今日しちゃおっか?」 「…んなっ?!」 「今晩、ずっと一緒にいようよ」 「…っ!」 目をこれでもかと見開いて、声を失いパクパクと魚みたいに口を開閉する私。 目の前にある意地悪に上げられた口角は、私が思惑どおりの反応を示したことによりじわりじわりと崩れはじめ… 「…ふっ、ふはは、本当いい反応!」 「え?!」 5秒と経たず、いたずらが成功した子供みたいにゲラゲラ笑い始めた。
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