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ま…また、からかわれた…っ?!
「も、もう…久城さん…っ!」と、唇を噛んで睨みながら久城さんの肩にポカっと拳をぶつけたけど、ダメージを受ける様子もなく。
「本当に泊まってもいいよ?一緒お風呂入る?」
「は?!…え、…く、久城さんもうお風呂入ったんですよね?!」
「うん、美波ちゃん来る前に入ったけど…
…ん?入ってなかったら一緒に入るつもりだった?」
「…っ、ち、違う!」
ひとつのからかいが終わったと思ったら、すぐにまた次の攻撃。
すでに赤い顔をボンっとさらに紅潮させながら発狂する私に、また無邪気な笑顔を見せる久城さんは、案外子供っぽい人なのかもしれない。
「もう、久城さん…からかうのもいい加減にしてください〜!」
「えー、全然からかってないよ?ちゃんとレッスンしてあげてんじゃん。」
「…レッスン?」
不服な顔のまま首を傾げて聞き返した私に、「そ、」と短く返事をした彼は、私の方に手を伸ばし、まだ熱の冷めない頬に手の甲でそっと触れた。
「…美波ちゃんが教えて欲しいって言うから。」
「…え?」
「“恋愛”」
「…!」
迫ってくる久城さんの顔に自然と身体が仰反ってしまう。
イヤだから…じゃない。
神々しすぎる彼の顔に心臓が耐えられないから…、これ以上のドキドキを知らない私はビビってすぐにでも逃げ出してしまいたい。
「ダーメ。逃げないの。
教えて欲しいって、自分から俺の家に上がったんでしょ?」
「…は、…い、」
「恋愛感情教える…ってことは、俺に恋させないといけないわけでしょ?
…だから、一生懸命口説いてあげてんのに“いい加減にして”とか言っていいのかなぁ?」
貼り付けたような綺麗な微笑みは芸術品みたいなのに、その美しさとは裏腹に、有無を言わさないような圧力がある。
「…ご、ごめんなさい。」
思わず謝ると、「ふふ、俺の弟子お利口さん」と頭に優しく手が乗った。
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