Seen3 初めてのレッスン

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目の前には国宝級イケメン。 私のお粗末な演技を厳しく指摘したあの表情は嘘のように…私を映す彼の瞳はとてつもなく甘い。 頭を撫でる暖かく優しい手が恥ずかしくて、でも心地よくて…。 「美波ちゃん、顔あっつい。」 「…っ、ちょ、」 「なんでかな?…揶揄われて恥ずかしいから?それとも俺の言葉にドキドキしてたりすんの?」 「ち、近い…です、」 慣れなすぎる状況にガチガチに固まる私に微笑を浮かべながらジリジリと距離を詰めてくる久城さん。 私の頬をキュッと摘んで上に引き上げながら、意地悪に口角を上げた。 「このくらい距離に慣れてもらわないと、ラブシーンなんて演じられないよ?」 「…、」 「本当の恋人は、もっとすごいことするんだから。」 「…すごい、こと?」 「ん、…試してみる?」 摘んでいた頬をピッと引っ張るように離したと思えば、次は手のひらを当てられて、浮かせた親指で私の唇をプニプニと触るから… 隠そうとも思わなくなるほどバクバクと煩い心臓の音とともに、ゆっくりと久城さんから目を逸らした。 「…、勉強に…なるの、なら…」 「…」 「知りたい、です…、恋人たちがする…すごいこと…。」 「…、…ふ、強いね、美波ちゃん。」 するりと耳の後ろを通って後頭部に差し込まれる大きな手。 もう片方の手は私の腰下に置かれ、ソファーの背もたれに押し倒されるような体勢に、逃げ場なんかはもうなくて。 「目、閉じようか?」 「…はい、」 「緊張しないで?…唇は柔らかくって…昼間に教えたでしょ?」 「…」
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