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「…」
「…」
「ねぇ、不意打ち可愛すぎない?」
「…お、お返しです。」
私のくしゃくしゃになった髪をすくように整えながら、「ねぇ、」と顔を覗き込んだ久城さんは、
「思い他嬉しかったから、もっかい言ってみて?」
「…、」
「みーちゃん、お願い?」
甘えたような柔らかい声に国宝級のおねだりフェイス。
加えて、“みーちゃん”だなんて、可愛すぎる名前で呼ばれたら…お望み通り、私も名前で呼ぶしかなくなるじゃないか…。
ゴクリと喉を鳴らして、
「す、す…昴…さん、」
意を決して再び下の名前を呼んだのに。
「ダーメ、さっきの方がいい。」
「…んう、」
私のせっかくの気遣いを良しとしない彼は、また私の頬をきゅっと摘んで不服そうに唇を尖らせる。
「す、すぐほっぺたつねるのやめてください…!」
「だって、美波のほっぺたプニプニで可愛いんだもん。」
「…っ、す、すぐに可愛いとかいうのもダメです!」
「可愛いもんは可愛いからね。てか、話逸らそうとしないで?名前。ほら、早く呼んで。」
「んううぅ〜…!」
さっきは呼べたのに、こうやって目の前で待たれると、やっぱり少し恥ずかしくて…拒否感を示すべく唸ってみても彼の鉄壁の笑顔が崩れることはない。
ああ、もう…。
普段の会話の中でサラッと呼び方を変えた方が格好がつくのになぁ…
「す、…昴くん!」
「はい。」
「よ、呼びましたよ?!」
「敬語もNG」
「…っ、よ、呼んだよ?これで…いいんです、…っいいの?!」
胸の前で両拳を振りながら、なんとか発した名前とタメ語。
満足したように瞳を三日月型に細めた久城さん改め、昴くんは、
「ん、すごくいい。」
と、優しく優しく私の頭を撫でた。
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