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そのあと、ソファーから立ち上がった昴くんは、「呼び方も決まったことだし、ご飯にしよっか」とキッチンに向かった。
「美波、お腹空いてる?」
「え、私の分もあるんですか?」
冷蔵庫の中を覗き込みながら聞かれて、反射的に答えると「敬語。」と、ジトッとした視線を送られて、
「あっ、…私も、食べていいの?」と慌てて言い直せば、「ん、もちろん。」と小さく微笑まれた。
「俺、料理しないから、レストラン経営してる友達に頼んで作ってもらってるんだけどさ。結構美味しいから気に入ったら今度連れて行ってあげる。」
「え!いいの?!やったー!」
両手を上げて子どもみたいに喜ぶと、「あはは、リアクション可愛い。」とクスクス笑われた。
う、しまった…食い意地張ってるやつみたいに思われたかな?
それとも、ご馳走になる気満々の図々しいやつだと思われてたり…、
「あ、あの!違いますからね?!
私は、く…、昴くんとご飯行けることに喜んだのであって、食べ物に惹かれたわけでは決して…、」
自分の名誉を守るために、眉間にシワを寄せて弁解した言葉。
でも昴くんが何故かこちらを凝視して固まるから、思わず私も言葉を止めて…。
「…美波ちゃんって、天然の人タラシだよね。」
「え?」
「そんな可愛いこと言われてドキッてしても、どうせ深い意味ないんだろうなぁって思うとちょっと落ち込むわ。」
「…?」
真空パックに入った料理を冷凍庫からいくつか取り出しながら、ため息を漏らす昴くん。
何故落ち込む必要があるのかよく分からなくて、「ご、ごめんなさい…?」と何となく謝ると、
真空パックの封を切りながら、「まあ、俺はそういうところが気に入ってるんだけどねえ」と返された。
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