Seen1 嘘つき女優

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「美波、今日は前言ってた主演映画の顔合わせだから。お前にとっては初めての主演映画だ。気合入れていけよ?」 「…はい。」 つい先日、決まった映画のお仕事。 ヒットメーカーの福山監督が二年ぶりにメガホンを取る作品で、話題作になることは間違いなし。 それなのに何故か、こんな私に主演をしてほしいだなんて…正直荷が重い。 私のせいで、福山監督初めての失敗作になったら…と、出演のオファーがあった日から胃がキリキリ…。 「…私に本当に務まるのでしょうか…」 「まあ、今までは『元気で明るい女の子』っていう美波のイメージに合う役ばかりだったが、今回は『小悪魔な雰囲気を放つ、猟奇的な女』役だからな。難しい仕事だとは思うよ?」 「…」   そう、今までは基本的には青春漫画の実写で、主人公に恋をするヒロインという役どころがほとんど。 他の作品の女優さんの演技を研究して真似したり…というのでなんとか対応することができた。 等身大の私で演じても…そこまで違和感のないシーンも多かったし。 が、しかし…今回の作品は… 仮タイトル『サイコな女』 小悪魔で、男を遊び感覚で手玉に取る…本物の愛を知らない女、愛菜が主人公。 そんな愛菜が一人の男性に恋をして愛を知り…そして、精神が崩壊していく様を描く一風変わったラブロマンスだ。 そして、その相手役というのが… 「なんて言っても相手役があの久城昴(くじょうすばる)だからなぁ…」 「…」 「頑張らないと、お前の演技が霞むぞ?」 久城昴。昨年主演した映画であらゆる映画賞の主演男優賞を総なめにした若手実力派俳優。 学生時代から第一線で活躍している彼は、国宝級イケメンランキングでは殿堂入り、一昨年、朝ドラに出演してからは【国民の彼氏】などと呼ばれ、今や飛ぶ鳥を落とす勢いだ。 そんな人を相手役に…私が主演…。 無理だ、絶対…無理だ。
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