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しばらくしてグレーのスウェットを持ってリビングに戻ってきた昴くん。
昴くんは身長が高いし、てっきりかなり大きいスウェットを渡されるんじゃないかと思っていたのだけれど、渡された服は案外私サイズで…。
「レディース、ですか?」
「うん、前に女の子が泊まった時に置いていったやつ。」
「…」
昴くんの言葉を聞いた途端、何故だか胸にモヤっと嫌な気持ちが広がる。
さっき友達がよく遊びにくるって言ってたけど、それって男の人だけじゃないんだな、とか。
これをこの家に置いていった人って…本当に“友達”?とか。
今までに感じたことのない不穏な感情が素直に内側から溢れ出た。
「…あの、私がこれ着て…持ち主の方、怒りませんか?」
「大丈夫。みんな着回してるし。」
「…みんな、」
へー、そんなに色んな人が来るんだ。
そりゃあそうだよね。昴くん、色んな女の人と遊んでるって木嶋さんが言ってたし。そうじゃなかったら、私を簡単に家に入れたりしないよね。
「…美波ちゃん?」
「…」
私、…なんで機嫌悪くしてるんだろ。
昴くんは私に協力してくれてるだけで、本当の恋人なんかじゃないのに。
優しさで女性物の服を用意してくれて、それなのにこんな態度…昴くんにすごく失礼だよ。
…でも、
「昴くん、」
「…ん?」
「世の彼氏さんは、彼女に他の女の人の服貸すの?」
「…え、」
「やだ、私…着るなら知らない人の服より昴くんのがいい。」
「…」
すごくわがままだし、失礼だって分かってるけど、
…やっぱり、どうしてもこの服は着たくない。
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