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「ご飯冷めるから早く着替えておいで?」と、洗面所まで案内してくれた昴くん。
整頓された洗面所。
でも、そこにも女性ものの化粧品が置かれていて…胸がチクチクと痛くなる。
木嶋さんから昴くんはプライベートでは遊び人だって聞いていたじゃないか。
そんな昴くんだからこそ、『恋愛を教えてください!』なんて無茶なお願いを受けてくれたわけだし…。
私と昴くんは、ただの共演者で、師匠と弟子で…。
恋人役ではあるけれど、決して恋人という関係ではない。
それなのに…、昴くんがあまりにも優しいから。
仕事に誠実で、面倒見が良くて、努力家で…。
知れば知るほど素敵な昴くんに…私は幻想を抱いてしまっていたのかな。
昴くんがこんなに親切にしてくれるのは私だけなんじゃないかって…。ほんの少しでも…彼にとって私は他の人とは何か違うんじゃないか…って。
イタすぎる、主人公思考。
本当に馬鹿みたい。昴くんはただ、これ以上私が足を引っ張らないように協力してくれているだけ。ただそれだけ。
頭からすっぽり彼のスウェットをかぶると、やっぱり丈が長くて、服の裾が太ももをすっぽりと覆った。
ふわりと香る昴くんの香り。
胸がキュッと痛むのは、この服も他の女の子に貸したことあるのかな…って考えたからだ。
無意識にそんなことばかり考える私はおかしい。
昴くんが他の女の子をこの家に上げていようが、服を貸していようが、頭を撫でていようが…、私には全然関係のないことなのに。
怒ったような、拗ねたような、泣きたくなるような…ムカムカした気持ちになる。
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