Seen1 嘘つき女優

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映画の制作会社の大会議室に集まり、奥の席に座る。 長机にズラリと並ぶキャストの面々は、実力派の有名な役者さんばかりで…、そのセンターに自分が座っていることが恥ずかしくて仕方なかった。 クランクイン前にキャスト全員が自己紹介等を行う「顔合わせ会」は、ドラマとかではよくあるが、映画の撮影では行われないことが多い。 しかし、キャスト、スタッフ一丸となって作品を作りたいという監督の意向により、こうして豪華すぎるキャストが一同に会することになった。 この会議室に入る前、木嶋さんからは「頑張れよ?」とエールを贈られたけれど…こんな圧倒的実力差がある中で…何をどう頑張れと言うんだぁ…! 場違いすぎる環境に置かれていることが苦痛で、もうすでに帰りたいし、なんなら泣き出したい…。 お仕事だ、お仕事だ、と言い聞かせながら、表向きは嘘の笑顔を貼り付けているものの…うう、顔合わせだけでこんな状態。 こんなんで撮影期間どうにかなるのかなぁ、不安しかないよ…。 「久城昴さん、到着されました〜」 私がネガティブ大発揮している中、会議室内にピリッと目に見えない緊張感が走る。 全員が席を立ち、入り口に注目する中、登場したその人は…。 「お疲れ様です。お待たせしてすみませんでした。」 …う、わ、…… その場の空気を変えるオーラに…思わず、息を呑む。 テレビで見た時のまま、彫刻のように完成された顔面は、さすが国宝級。 男の人なのに毛穴すら見当たらない綺麗な肌に、スッと伸びた鼻筋。 切長の二重は長い睫毛に縁取られ、目があったら心臓止まってしまいそうなほどの目力。 それに加えて、180センチを超えるスタイルの良さも持ち合わせているだなんて…。 この人、……本当に、 ………同じ世界の人間ですか?
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