Seen3 初めてのレッスン

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しばらくは抱きしめながら、私が食べるのをじっと見ていた昴くん。 「昴くんは食べないの?」と尋ねると「食べさせて?」と口を開けられて、フォークの先にクルクル巻いたパスタをカタカタ震える手でなんとか運ぶと、 「ん、うまい!」と満面の笑みを見せた彼。 テレビではクールな印象の彼の無邪気な笑顔に…鉄砲で撃たれたみたいな衝撃が体の中心を貫いて。 今日は一生分のドキドキを浴びせられて、多分寿命10年くらい縮んでるよ…絶対。 3回くらい昴くんに食べさせた頃、「やっぱ食べづらい」と言って私の隣に座り直した昴くんは本当に自由な人だと思った。 でも、その次の瞬間、「美波、俺ばっかに食べさせんじゃん。美波もいっぱい食べな?」と頭に手を置かれ、…優しい人だなとも思った。 「はー、食った食った。」 「すっごく美味しかったです!」 「そ?じゃ、次、この店行くの決定ね。予約するから空いてる日教えて。」 「え!嬉しいです!明日、マネージャーにスケジュール確認しておきますね!」 「ん、よろしく。」 やった…昴くんと二人でご飯だって…! 今まで男の人に食事に誘われても、どう断ればいいか悩むだけだったのに、どうして昴くんだとこんなに嬉しいんだろう。 尊敬する俳優さんだから?演技の話をもっと聞きたいから? なんでだろう…、もっと昴くんを知りたいって思う。 私のことも知って欲しいし、それはお仕事上の…ってことじゃなくて、もっとこう…なんというか…、 名前のつかない感情をもどかしく感じながらも、昴くんとのご飯の約束に思わず頬を緩ませる私に、「美波」と声をかけた昴くん。
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