Seen3 初めてのレッスン

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「だっ、だだだだ、ダメですっ!!」 「…」 ギュッと強く目を瞑って、咄嗟に前に出した手の平にぷにっと当たる昴くんの唇。 「なんすか、これは」って、不服そうな声と共に手首を掴まれて、恐る恐る彼を見上げると…声と同様不機嫌そうに眉間にシワを寄せていて。 「あわ、わわわわわ、ご、ごめんなさい…っ、私如きが、本当に本当!」 「……いや、慌てすぎ。別に怒ってないけど…。何、やっぱり嫌なの?俺とキスするのは。」 「え?!いや、今のはそういう意味じゃなくて…」 モゴモゴと口籠る私に「じゃ、何?」と答えを急かす昴くんは…本当に怒ってない? 蛇に睨まれたカエル状態でプルプル震えながら、真っ直ぐに向けられる瞳に殺されそうで斜め下に目を逸らす。 ああ、ここで目を逸らすなんて失礼だよ…ぉ、絶対。 キスを拒否したのだって、昴くん怒ってるのに…早く、早く…弁解しなきゃ……、 そう思っていても、昴くんと触れた場所全部が熱くて、上手く声が出てこない。 「…美波が嫌なら無理やりは出来ないけど。」 「あ、っ、ちが…」 少し寂しそうな声色にズキっと心臓が痛んで、慌てて声を出すけどやっぱり吃る自分が情けない。 昴くんは私が愛菜を演じられるように協力してくれているだけなのに… そこに私欲なんてなくて…それなのに、私一人意識して…馬鹿みたいだし、こんなんじゃ不真面目だって呆れられちゃうかも…。
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