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ボソリと呟いた声は一気にテンションが下がったもの。
うわ、またすごく嫌な言い方をしちゃったな…ってすぐに反省したけど、一瞬で広がった胸のモヤモヤをすぐに切り替えられるほど私は大人じゃないみたい。
無意識にムッと唇を尖らせて、女性ものの化粧品を凝視する私に気がついた昴くんは「ああ、これね。」と一言呟いて、軽く口角を上げる。
「…なに、みーちゃん、これ嫌なの?」
「…っ、え、いや…とかじゃ…」
「さっき女物の寝巻きも嫌がったよね?」
「…」
昴くんのプライベートに文句言うような立場ではない私は口籠る。
それでも、返事を求めて私の顔を覗き込んでくる昴くんに、いじけた顔で俯いて…。
「別に…私に関係ないですし、…別に。」
「…ふーん、そう…。」
少し残念そうに漏らしながら口から歯ブラシを取り出し、うがいを始めた昴くんに…
「でも、ちょっとショックだった。」
「…っ、」
「昴くん…この家に色んな女の人泊まらせてるんだ、って思ったら…なんでかモヤモヤする…。」
「…」
「関係ないのに感じ悪いこと言ってごめんなさい…。」
どうしよう…思ってること素直に言っちゃった。
ほとんど初対面だっていうのに…こんなこと言うなんて、こんなこと考えているなんて…本当うざいし、キモいよね。
言わなきゃよかった、言わなきゃよかった…って。
可能なら、うがいの音で聞こえてなければいいのにって願って…。
でも、そんな願いは残念ながら届かない。
「美波、…結構、嫉妬心…強いんじゃない?」
「…っ、」
そんな一言と共に洗面所を出て行った昴くんに…、サーっと血の気の引く感覚。
心の中で一言、「終わった…」って呟いた。
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