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あああああ、やってしまった。
やだ、絶対昴くん怒った…っていうか、気持ち悪いって思われた…っ!
馬鹿馬鹿…、昴くんは俳優の大先輩で、尊敬する共演者で…、
昴くんがプライベートで遊んでようが、家に沢山の女性を入れていようが全然私には関係ないはずなのに…
それにモヤモヤしちゃうのなんて、私の勝手で、それを昴くんにぶつけるのは絶対に間違ってたのに…。
映画の撮影は始まったばかりだって言うのに、ここで嫌われてしまったらこれからどうしよう…って、すごく慌てて、
すぐにでも「今の嘘です、ごめんなさい!」って必死に謝ろうって、急いで口を濯いでいると…。
「あ、歯磨き終わった?」
「…っ、」
怒っていると思っていた昴くんは、あっけらかんと私に尋ねて再び洗面所に現れた。
ポカンとした顔で昴くんを見つめると、「あは、まだ歯磨き粉ついてるよ。可愛い」と笑って頭を撫でる。
「あ、あの…私、立場考えずに生意気なこと言って、本当にすみません…っ、」
じわりと揺れる視界の中、必死な声で謝る私に「なにが?」と首を捻る昴くん。
え…なにが、って…
一時停止する私を放置して、手に持っていた袋をガサッと開いた彼は、洗面台の横に置かれていた化粧水を手に取った。
…ゴト、
「…え?!昴くん?!」
「うわ、何…急に大きな声。」
なんの躊躇もなく、まだ半分以上入った高級化粧水。袋に投げ入れた彼に、思わず発狂してしまった。
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