Seen3 初めてのレッスン

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イヤイヤ、と首をふりながら昴くんの手首を掴むと、するりとそれをずらされて、指を交互に重ね合わせた形で手を繋がれた。 「みーちゃん、キスしてるとき息止めてる?」 「え…?わ、分かんない…」 「んー、分かんないかぁ?じゃ、次は鼻で息するの意識してみよっか?」 「ん、頑張る。」 「ふふ、頑張って?」 まるで子どもに声をかけるみたいに柔らかい声で私に教えてくれる昴くんに、初めてづくしで知能低下している私も子どもみたいに返してしまう。 後頭部に置かれた手はキスが始まる合図。 ゴクリと喉を鳴らして先ほどのように唇の力を抜くと、唇が触れた瞬間、私よりやや低い温度の彼の舌が再来する。 「…ん、…ふ、」 「…」 また口内を縦横無尽に駆け巡る昴くん。 やっぱり苦しくて眉間にシワを寄せると、僅かに目を開けた昴くんがトントンと私の鼻頭を指先で叩いた。 そうだ、さっきアドバイスされたとおり、口じゃなくて鼻で息をしなきゃ… そう思って、鼻から息を吸ってみたけれど。 「…っ、ふぁ、んん」 「…?」 「……ふぁ、……や、出来な…っ、」 結局出来なくて、無理やり昴くんの肩を押して自分から唇を離した。 「…はぁ、はぁ、」 「…大丈夫?みーちゃん。」 全身の力が抜けてしまい、昴くんの肩口に顔を埋めてしなだれかかる私の背中を優しくポンポンとさすってくれる優しい昴くん。 あんな激しいキスをたった今していた人とはとても思えない…。 ようやく私の息が落ち着いてきた頃、昴くんが私の体を起き上がらせて、至近距離で聞いてくる。 「みー、鼻で息しなって言ったでしょ?出来なかった?」 「うん、出来なかった…。」 「難しかったの?」 「ううん、それもあるけど…、」 恥ずかしくて、視線を斜め下に下ろしてから、ようやくまた昴くんに戻し、小さな声で呟く。 「昴くんに…鼻息…かかるの…、 恥ずかしいから…やだ。」 「…、」 どうやったら…昴くんに鼻息当てずに息できる?って考えていたら、答えより先に酸欠が来てしまったのだ。
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