1144人が本棚に入れています
本棚に追加
「美波、もう完全に愛菜掴んだんじゃない?」
「え?!本当ですか?」
二人きりの休憩スペースでそんな風に褒められて、思わず目を輝かせてしまう私はもう完全に昴くん信者。
「前みたいに付け焼き刃じゃなくて、美波自身の演技で愛菜を表現できてる気がする。」
「どうしよう…昴くんに褒められるの、すっごく嬉しい!」
「ははっ、相変わらずのポメ感。」
「ポメ感?」
「ポメラニアン感。」
柔らかく笑いながら私の頭を撫でる昴くん。
確かに、私に尻尾があったなら、ブルンブルンと左右に激しく振り回したい気分。
撮影が始まって2週間ほどが経ち、連日の撮影で疲れは溜まっているはずなんだけど、
日に日に昴くんと心の距離を詰められている感覚があるから毎日すごく楽しい。
あれほど嫌だった演技のお仕事。こんなに充実感を得ながら過ごせるのは私にとっては奇跡みたいなことだ。
「昴くん、またノート書いたから見て欲しいの!」
鼻息荒くカバンからA 5サイズのノートを取り出して昴くんに差し出せば昴くんはフッと笑う。
「また書いたの?これで3冊目でしょ?小説出せばいいじゃん、もう。」
「だ、出さないよ…!私の妄想だらけのこんなノート…昴くんにしか見せられない。」
冗談を言いながら私から受け取ったノートをパラパラめくる昴くんに赤い顔して口を尖らせた。
最初のコメントを投稿しよう!