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と、そこに一人の会員があることに気づいた。
「なんだろう? これ」
それは、ジッパーだった。
西園寺の背中に、ジッパーがある。普通、生身の人間についているはずのないものが。
好奇心が抑えられなかった。彼女はおそるおそるジッパーのつまみに手を伸ばす。そーっと下へとやる。西園寺の背中がぱっくりと割れた。
「え!」
唖然とする中、西園寺の背中の割れ目から、男が姿を現した。イケメンとはほど遠い、むくつけき男である。ふーふーと汗だくになりながら、西園寺の体から這いでてきた。
会員たちは戦慄し、白目を剥いて気絶する者、失禁する者、狂ったように叫ぶ者、全速力で逃げだす者、110番に通報する者、神に懺悔する者、ゲラゲラと笑う者……とさまざまな反応を見せた。
なにはともあれ、彼女らは幻滅したに違いなかった。桜の花びらが散っていく。
むくつけき男は歓喜の涙を流し、顔をぐしゃぐしゃにして声をあげた。
「やっとイケメンを卒業できた」
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