イケメンの卒業

4/4
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 と、そこに一人の会員があることに気づいた。 「なんだろう? これ」  それは、ジッパーだった。  西園寺の背中に、ジッパーがある。普通、生身の人間についているはずのないものが。  好奇心が抑えられなかった。彼女はおそるおそるジッパーのつまみに手を伸ばす。そーっと下へとやる。西園寺の背中がぱっくりと割れた。 「え!」  唖然とする中、西園寺の背中の割れ目から、男が姿を現した。イケメンとはほど遠い、むくつけき男である。ふーふーと汗だくになりながら、西園寺の体から這いでてきた。  会員たちは戦慄し、白目を剥いて気絶する者、失禁する者、狂ったように叫ぶ者、全速力で逃げだす者、110番に通報する者、神に懺悔する者、ゲラゲラと笑う者……とさまざまな反応を見せた。  なにはともあれ、彼女らは幻滅したに違いなかった。桜の花びらが散っていく。  むくつけき男は歓喜の涙を流し、顔をぐしゃぐしゃにして声をあげた。 「やっとイケメンを卒業できた」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!