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高校の卒業式を終え、その生徒がグラウンドに姿を現したとき、黄色い歓声が響き渡った。
どどどどどど。勢いよく駆ける女子たち。ぐるりと、その生徒をとり囲む。
西園寺タケルは動じることなく、さわやかな風が吹きそうなスマイルを浮かべた。彼にとって、これはいつもの光景なのだ。
西園寺は、文武両道、甘いマスク、非の打ちどころのない性格、という天が二物も三物も与えたようなイケメンだった。そしてなにより心奪われる笑顔は、生徒のみならず教師をも魅了する。
ファンクラブも結成され、その数は年々増加していた。
彼の周りに集まっているのは、そのファンクラブの人々である。
「やああーん。タケルくんとお別れなんて悲しいですぅ~。卒業しないでください」
「コラ、そこ! 会員番号398番。タケルくんなんて馴れ馴れしいわよ! ちゃんと『西園寺さま』とお呼びなさい」
「ひゃうん」
「まあまあ、鈴木さん。そんなに怒らないであげて。今日は、僕の門出なんですから」
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