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怒声を飛ばす後輩に、西園寺は優しく声をかける。
「さ、西園寺さま。名前で呼んでくださるなんて。死んでしまいそうですわ」
今にも卒倒しそうな鈴木と呼ばれた後輩は、他のファンクラブ会員に支えられていた。
「ところで、西園寺くん。その、卒業の記念に制服の第二ボタンをくれませんか」
別のファンクラブ会員が出し抜けに頼んだ。
「あ、ずるい」
「この女狐め!」
「そうはさせないわよ」
「抜け駆けは万死に値するわ!」
とたん、会員同士の醜い争いがはじまった。
目の前で繰り広げられる、キャットファイト。が、西園寺は変わらず笑みを浮かべている。見慣れた光景なのだ。
「第二ボタンは早い者勝ちだよ」
西園寺は、自らの第二ボタンを引きちぎり、虚空の彼方へと投げ飛ばした。
「あれは私のよ!!」
「会員番号251番になど負けるかー」
「いいえ、必ずあたしが手に入れるぅぅぅ」
粉塵をまき散らしながら、幾百人もの会員たちが各々走り去っていく。残された会員たちは、期待のまなざしを向けていた。
もちろん西園寺に。
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