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「恐れ多いのですが、西園寺さま、その、第三ボタンをいただけませんでしょうか?」
勇気を振り絞って、会員の一人が歩み寄る。
すると、西園寺はにこりと笑顔を向けた。第三ボタンをむしりとるなり、その会員の手をとって握らせたのだ。
たちまち、私にも私にも、と西園寺に押し寄せた。
「では、私は第四ボタンを」
「じゃあ、第五ボタンを」
こんな調子で、西園寺の制服からボタンは次々と消えていく。
こうなってくると、ファンクラブは暴走し、ブレーキが壊れたトラックのようになっていた。
もみくちゃにされ、まるで追い剥ぎのごとく、西園寺が身に着けているものを奪っていく。
とうとう西園寺は丸裸になった。けれども、彼は動じない。直立し、前を隠そうとする素振りも見せなかった。
きゃー、やーん……チラッ。会員たちは両手で顔を覆いつつも、指と指のあいだから西園寺を覗き見る。
「やれやれ。きみたち、いけないなあ。セクハラだよ」
笑顔を張りつけたまま、西園寺はあきれていた。
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