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その呂桑は、
「ああそう」
気のない返事で、やはり中国選手団にも無関心。
「東西両陣営が概ね参加する今回のオリンピックこそ世紀の祭典と呼ぶに相応しい。それなのに無関心とは」
と、劉学生は呂桑の浮世離れぶりに呆れ顔。
「歴史的に中国の柵封国だった朝鮮半島、そして今日米ソ冷戦最前線の韓国でオリンピック開催。中国人として多くを考えさせられないかね」
と、祁学生はしみじみ。
小賢しげに時局を演述してはいたものの、中国選手団の行進が過ぎてしまうと延々他国選手の行進が続くのみ。変わり映えしない中継画面に七人は少々飽きてきた。
「――ところで呂桑、何のビデオを視てるんだ?」
と、張学生は呂桑の方を伺う。
「日本のアイドル番組だ。美少女は目の保養になるぜ」
むさ苦しい野郎高密度空間である。美少女と聞いてしまってはリビドーを分泌させられずにはいられない。
やおら、陸学生は世紀の祭典から呂桑のマイテレビの前に馳せ参じる。
「いやにリラックスした番組だな」
広闊なオリンピックスタジアムとは打って変わり、ブラウン管画面には閉塞的なスタジオにて高校生ぐらいと思しき娘達と司会者の男性がラフな服装でのんべんだらりと談笑している。客席とも距離が近く、大掛かりな舞台セットを組んだ中央電視台の歌謡ショーとは構成の趣旨がかなり異なるようだ。
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