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1.-
再会はスローモーション。
遭えるとは思ってなかった人物が目の前にいた。
しばらく、彼女の行動に目が離せなかった。
ここで彼女を見失ってしまったなら……
今度こそ永遠に、彼女はもちろんのこと哀川翔平とも出会える日は
来ないのではないか!
気が付くと、白木咲子は哀川翔平の妻、友子に
声を掛けていた。
「あのぅ、すみません……」
私が声を掛けると、ショッピングモールの出入り口から今にも出て行こうとしていた彼女が振り向いた。
「何か……」
「失礼ですが、哀川翔平さんの奥さん……じゃないでしょうか? 」
「はい……そうですけど」
「いきなりで驚かれましたよね?
実は私ご主人とは同じ大学でした。
白木と申します」
「そうなんですか……。
えっとどちらかで私、白木さんとお会いしたこと
あったのでしょうか? 」
「そうですよね、お会いしたこともないのに哀川くんの奥さん
だって知ってるなんて……おかしいですよね。
実は半年ほど前でしたでしょうか、ご家族で〇〇動物園へ
行かれてましたよね?
実は私も姪っ子を連れて動物園に居たんです。
その時はなんとなく声を掛けそびれてしまって。
で、今日奥さんを偶然お見掛けして、今度こそ声をおかけしないと
もう二度と哀川くんとも接点なくなってしまうかなって思うと、なんだか
焦っちゃって、奥さんに声をおかけしてしまいました。
驚かせてしまってすみません」
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1-2.
「そうでしたか。
夫とは親しかった……のでしょうか? 」
「ええ、それなりに仲良くさせていただいてました。
もういつお会いできるかもしれませんし、もし少しでもお時間
あるようでしたら、お話できませんか?
外を歩き回って疲れてるでしょうし、お茶休憩兼ねて
いかがですか?
哀川くんの学生時代のお話もできるかと思いますよ。
ふふっ、懐かしいわぁ」
私は哀川くんの奥さんを誘いショッピングモールから歩いて
5~6分のJR駅前のトールコーヒーショップに入った。
昼食時から少し時間が過ぎていて、ほどよくテーブルが
ちらほら空いていた。
何度か利用したことのあるショップ。
デートなんかじゃ来そうにもない簡素な造りのショップだ。
駅近なのが時間に追われてる人間にはいいのよね。
それにお腹が膨れた後だったりとか、会話疲れしちゃったりしていても
ほぼ歩かずに電車に乗れちゃうじゃない。
椅子が好み。
使い勝手がいいというか、座り心地がいいのだ。
深いグレーの革素材の椅子で、いわゆる応接間なんかによく
見受けられるソファみたいな椅子でカバンを背もたれに置いても
割と普通に座れるサイズになっていて、テーブルはwood素材のこげ茶
で丸いテーブル。
---
2.
お互いに座るとパラパラっとメニューをめくって見る。
「何にします? 」
「コーヒーに……」
ウエイトレスが注文を取りにくると、私はコーヒーをふたつ
頼んだ。
「私、このお店には何度か数えるほどですけど、来たこと
あるんですよ」
「私はこの周辺はちょくちょく来ますけど、こちらは初めてです」
私たちは飲み物が来るまでの間、当たり障りのない会話で
やり過ごした。
・・・
「え~っと自己紹介させていただきますね。
改めまして、わたくし白木咲子といいます」
「あぁ、私は友子って言います。字は友達のとも、です」
「私は花が咲く、の咲子です」
「「……」」
「もうお話できるのも今回が最初で最後かもしれませんから
知りたいこととか、単刀直入にお話させていただきますね。
哀川くんが結婚していて、子供までいたなんて。
知らなくて、動物園で見かけた時はビックリしました。
あぁ、ごめんなさい。
もう私たちの年齢だとそういうの、おかしくないんですけどね。
なんか、気持ちがいつまでも学生時代のままなものでスミマセン」
----
2-2
「いえ。
今は男の人も女の人も28.9だと独身者多いですから」
「早い人は早いし、30代、40代でも独身でいる人も昔に比べると
随分と多いですよね……って、私もその内のひとりなんですけどね。haha..あの、友子さんたちって……あぁ哀川くんと友子さんね、その
どうやって知り合われたんですか? 職場恋愛とか? 」
「お見合いでした」
「お子さんの年齢から遡ると結構早くに結婚されてますよね? 」
「私は翔平さんの2コ下ですから、えっと私が22才翔平さんが
24才の時に結婚しました。お見合いしてから1年とちょっとで」
「哀川くん、24才の時にはもう結婚してたんだぁ。
私ったら、そんなこととはつゆ知らず……ずっと彼のこと
思い続けてたんだ。ヤダ..私ったら..マヌケ..」
待ち続けたといっても、誰とも付き合わなかったわけでも
なかった……のだが。
「あのぉ~、白木さん? 」
「私ったら、最初にご挨拶した時、哀川くんとは仲良くさせて
もらってましたって言いましたけど……私たち大学時代付き合って
ました」
大学時代の友人だと名乗る女性に付いてきたのだけれど……
昔の夫のガールフレンド? 恋人? だったみたい。
えっ、なに、なにこの展開。焦るぅ~。
---
3.
おかしいわよね、学生時代の友達なら動物園で私たちを
見かけた時に何故声を掛けてこなかったのかしら、とは
疑問に思ってたけれど。
恋人だったのなら、普通の同級生よりはずっと仲良くしてた
間柄のはず。
円満な別れじゃなかったのかもしれない。
少なくとも白木さんのほうはずっと翔平さんのことを
忘れてなかったみたいだから、翔平さんから振った可能性が
高い?
私の戸惑いを他所に白木さんは学生時代、翔平さんと付き合ってた
頃のエピソードを懐かし気にいろいろと語り始めた。
プリクラの中の2人。
いつ取り込んだのか? 持ってるスマホに保存されていた。
楽し気でふたりは活き活きしていた。
プリクラの中のふたりは若くてキラキラしていて……幸せそうだ。
そこには私の見たことのない翔平さんの表情が写っていた。
夫はこんな表情のできる人だったのだ。
カラオケBOXで撮られた写真もあった。
スマホの中の夫はノリノリで歌っている様子が伺えた。
数枚の画像から、ふたりの距離が透けて見える。
知らない夫の姿や話が聞けてうれしい反面、なんだかモヤモヤした。
「ふたりで過ごした時間は、本当に楽しかった……ホントニ」
白木さんは当時を懐かしむように切なげに語った。
この先、彼女からどんな話を聞かされるのだろう、少し
私はドキドキして待つ。
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3-2.
「今の彼はどんな感じですか? 」
予想外の質問に私は少したじろぐ。
とりま、質問にしつもんで返した。
「夫の今ですか!
そうですねぇ、やさしくて頼もしいところもあって……
娘たちにもやさしくて良い父親だと思います」
すかさず、彼女が呟いた。
「いいなぁ~!
私ね、ほんとにあの時のこと後悔してるんです」
あの時?
別れた原因がつまびらかにされるのか? ……されちゃうのか?
聞きたいような聞きたくないような感情が腹の底から
せり上がってきた。
「それは……ドウイウ ? 」
「哀川くんと付き合ってて、何も不満なんてなかったのに……
ううん、不満どころか大好きだったのに。
あの日に、一度、いちどだけだったの元彼に会ったのは。
あれはクリスマスイヴの日のことで、昼はふたりで買い物に行って
ケーキを買い、その夜、クリスマスイヴを彼と過ごしたの。
哀川くんとは25日にクリスマスを一緒に楽しむことに
してたのね。
イヴの日のことを哀川くんに内緒にしてたのは私が悪かったんだけど
まさかね・・クリスマスの日に会う約束してた哀川くんが前日のイヴに
家を訪ねて来るなんて、夢にも思ってなくて。
元彼には私が一方的に振られたって経緯があったから、最後に
ちゃんとした話合いがしたかったのね。
たまたまイヴの数日前に街でバッタリ会ったから、まぁそういう
方向で会うことになったんだけども。
でもけじめをつけたら、その後は哀川くんの元に返るつもり
だったのに。
--
4.
なんで哀川くん、イヴの日に会いに来ちゃったんだろう
って。
情けないことにずーっと私、そんな風な想いに囚われて
いて抜け出せないんですよね。
哀川くん、ドアの前までは来てたみたいなですけど、イ
ンターホーンも鳴らさず、メッセージだけを残して帰って
しまったんです。
短いメッセージでした」
「どんな? 」
「僕は咲子の一番にはなれなかったんだな」って。
それはそれはきれいなピンクのシクラメンがドアの側に
置いてあって、メッセージはドアのポストから投函されて
たの。
-気が付いたのは翌日で私、訳が分からなくて、連絡して
も哀川くん出ないし、約束した次の日、彼をひたすら深夜まで
待ってました。-
待てど暮らせど来てくれないし、連絡しても出てくれな
くて、ようやく大変なことになってるんだと認識しました。
後でいろいろ考えて出した結論なんですけど、哀川くん
は私が元カレと一緒にいるところか、元カレを自宅に招き
入たところ? 偶然どこかで見て知ってしまったんだと思う
んです。
……じゃないと、辻褄が合わないっていうか」
「夫は白木さんがその元カレと付き合ってたことは知っ
てたんでしょうか? 」
「もちろん。
元カレに振られた時にすごく相談に乗ってくれたのが
哀川くんだったの。
親切にしてもらううちに、哀川くんのことがすごく気に
なるようになって、私から交際を申し込みました」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
続きは製品版でお楽しみください。
♡:。.。別名義は表紙にてご確認ください。.。:♡
追記:
【自己紹介】
https://estar.jp/users/155217855 ----こちらからも飛べます。
noteで詳細を記しています。
周りくどいご案内ですみません。
(諸事情あり、控えめにしています^^💦)
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