63人が本棚に入れています
本棚に追加
/166ページ
第十一話 神の使いヒィナ
僕とフィオーレとアンナ、そしてヒィナは教会を後にする。
「それにしても驚きましたわ。その子、いきなり現れたかのように立っていたんですもの。接近されるまで気づきませんでしたわ」
アンナはそう言ってヒィナを見る。僕たちが歩いている後ろを無言で着いてくるヒィナ。本当に喋らない子だな、この子。
「僕のハニーが言ったんだ、この子は導かれし者だから連れていってくれ、って」
「は、ハニー?」
しまった! リラ神のことをハニー呼びしてしまった!
「な、なんでもないよ……?」
「そ、そう……?」
危ない、まさかあのゴリラをハニーと呼んでいるなんてバレるわけにはいかないからね。恥ずかしいからっていう理由だけど。
「それにしても……」
フィオーレは続けて言う。
「これで私がゴリラの適正がないことが証明されたわね!」
胸を張ってどや顔をするフィオーレ。もちろんその胸はぺったんこであるためどんなに胸を突き出しても平らだ。それにしてもゴリラの適正とは何なのだろうか?
「そ、そうだね……ごめんね、フィオーレ」
「そうでしょ!」
ふんすっ! と言う感じでぺったんこな胸を張っている。
「でも、アレは僕の能力……? 能力っていうのかな……? で、リラ様と会話できたみたいだけど」
「いったいどんな魔法を使えば神様と話ができるんですの……」
アンナは呆れたように言う。僕だって詳しくは分からないよ……
「ユエリア様って言う女神様に言葉が分かるようにしてもらったんだけど……」
「えっ……?」
フィオーレの表情が変わる。目を見開いてこちらを見ている。驚いているような、何かを恐れているような、そんな顔をしている。フィオーレには言ってなかったっけ? そういえば女神ユエリアのことは言っていないかもしれない。
「どうしたのフィオーレ……」
「い、いえ、何でもないわ」
フィオーレは何かを知っている。だがそれを僕たちに隠していることをリラ神から聞いた。そして深く聞かないであげてほしいということも……
「そ、そう……」
僕はここで切り上げる。これ以上聞くわけにはいかないからね……アンナは不思議そうな顔で僕たちを見ている。
最初のコメントを投稿しよう!