蛹と袴

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卒業式、友達と写真を撮るまなみの姿があった。 それぞれに可愛らしく、凛々しく。 装いは自信をくれる。それに、誰でも自分が美しくあろうとする時には人に意地悪をしたくないんだと思う。 ふわふわとした高揚感が子供たちを包んで、旅立ちを拍手で送った。 私といえば。 はじめっから号泣してて。 ハンカチを二枚用意していてよかった。 まなみは、友達にお母さんが縫ったと言ったようで誇らしげに見えた。 袴の色は深緑にした。歩いた時にヒダが開くときにだけ内側のレースが見える。 まなみは、友達に頼まれてくるりと回っている。 蛹だって、飛ぶ夢を見るかもしれない。 外からは見えないけど停滞ではなくて。 蝶になる日も近いのかもしれない。 いくつもの振袖を翻して風が吹く。 少しだけまた泣いてしまったのは、春のひかりのせいだ。
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