蛹と袴

2/4
前へ
/4ページ
次へ
「お母さん、袴作れるねんで」 「人と被らないものを作ればいいのよ」 そう言ったら娘が 何言ってんだこいつ、という顔をした。 まあパートが忙しくて手芸をする暇もなかったし。 娘が小学生になってからは少しずつ手芸をしているけど居ないときにして跡形もなく片付けているし。 「お母さん、ミシン苦手ってよく言ってたじゃん」 「あ、それは本当。かろうじて縫えるけど仕事でミシン使ってる人ほど使いこなせないから。 和裁は昔、京都でやってたからだいたいわかるよ」 「そんな話聞いてない」 「まあね、お母さんにもいろいろ秘密があるのよ。で?何色がいいの」 紺色、緑、紫…… パソコンで袴を見ていく。 刺繍入りもある。 「色々ありすぎてわからない」 「袴のプリーツのとこにレース付けるとか。 」 「紺のブレザーのイメージでタータンチェックを裏に仕込んでチラ見せしても可愛いと思う。あと黒にして裾をアシメトリーにしてゴスロリっぽくしても面白いかも。逆にパステルカラーも珍しいかもね。バテンレースを張り付けてもいいし、」 「待って、お母さんテンション高い!こわいよ」 「娘の着たいもの作るのにテンションぶち上げなくていつ上げるのよ!さ、明日布買いにいくわよ」 まなみが生まれたときのベビードレスも七五三も。 針と糸は祈り。 健やかであれ、と。 採寸をすると、自分とさほど変わらない背に改めて驚いた。 京都では十三参り用の着物があるけれど、柄は大人の小紋で可愛いんじゃないかなあ。 まなみが選んだのは、グレンチェックだった。 「そうきたかー!渋いね」 無地に見えるだろうな。 洋服の生地の売り場。フォーマル感もあるしなかなか良いと思った。 「これさ、半襟を白のレースにしてパール付けたら?ネックレスのイメージで」 「いいのかなあ」 「手袋とかベレー帽とか合わせたら可愛いだろうけど、春っぽさも欲しいもんね。」 「来年の初詣には、ベレー帽被ってコーデしようかな」 紙のうえでペンが描き出す。まなみの思う来年の自分。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加