ー中学1年春、すぐるの秘密ー

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ー中学1年春、すぐるの秘密ー

春はあけぼの。 すぐるは昨年マサと一緒に見た夏の、日の出の 淡い思い出を思い出す事がしばしばあった。 今日もすぐるは普段(いつも)のように登校すると、 板野秀樹がすぐるを気持ち悪いものでも 見るかのような目を向けて、すぐるに近づいた。 「おい、田中、昨日のあれはなんなんだ。  気持ち悪いだろうが。  お前もしかしてオカマか?」 すぐるは驚いた顔をして、急に秀樹に変な事を 言われ怒りが溢れ出し秀樹に言い返した。 「は?お前何訳判らねー事ぬかしてんだ?  この俺の顔が見えねーのかよ。  この何処がオカマなんだよ。  ざけてんじゃねーぞ。」 すぐるは秀樹に馬鹿にされた事が許せなかった。 秀樹とは小学校が違く、 中学のクラスで初対面である為、 まだお互いの事がよく判っていなかった。 「田中、気持ち悪いから近寄るな。  お前が女みたいに俺に付きまとって、  ベタベタと触ってきたんだろ?」 秀樹はすぐるの事が気持ち悪く 関わりたくなかったが 言わずにはいられなかった。 「はあ?俺がそんな事するかよ。  お前嘘つくんじゃねえよ。  何企んでやがる。」 「お前なんか昨日の雰囲気と違うな。  お前もうあんな事すんなよ。」 秀樹はすぐる達の前から姿を消した。 その日の放課後、 すぐるは秀樹と同じサッカー部で、 あまり行きたくなかったが、 マサと別れてサッカー部室へと向かった。 部室で秀樹が一人着替えていた。 秀樹はすぐるを見るなり気持ち悪いものでも 見るかのような目で見た。 秀樹は何故か、昨日のすぐると今日のすぐるの 態度が180度違うので、秀樹は冷静になり すぐるの目を真剣な眼差しで見つめると、 昨日あった出来事をすぐるに判りやすく伝えた。 「すぐる、お前にオネエ言葉で告られたんだよ。  それから俺の手を握られ、  お前が俺の手にキスしたんだ。  お前キモいんだよ。」 すぐるは暫く考え込んでいた。 (まさか、キヨシ、お前か?お前の仕業か?) 「秀樹、悪い(わりぃ)それ、俺のそっくりさんだ。  俺のストーカーで俺も困り果ててんだよ。  昨日俺は腹痛で学校を休んだ。  大腸炎で病院に行ったら一日安静にしていれば  良くなると言われて。  その日多分キヨシが俺になりすまし、  俺の学校へ行ったんじゃねーか?  キヨシは俺のイトコで俺と顔が瓜二つだ。」 すぐるはとっさに嘘をついてしまった。 「本当だろうな?  二度と俺にキモい事さえしなきゃいいよ。」 秀樹はすぐると和解すると、 チームメイトとして秀樹もすぐるも サッカーに情熱を注いでいた。 部活から帰り着くとすぐるは部屋の机に向かい、 暫く考え込んだ。 (キヨシを捕まえたいがどうすりゃ良いか?  今までキヨシが悪さしてなかったから、  キヨシの悪さをすっかり忘れていたが、  秀樹の話はどうやら本当の事だろうから  いつかキヨシが事件を起こしたら  ヤバいだろ。)
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