Voice

二年遅れの卒業式

　五組の元担任が2020年度に卒業した25人の名前を呼び終わった。ここに来ている人も来ていない人も、来れなくなってしまった人も。
　ゆっくりと流れるBGMは、私たちが高校の頃に流行っていた曲のオルゴールバージョンだ。一組のときから何曲かがリピートしている。
　『二年遅れの卒業式』実行委員会に参加した友達によると、学校の体育館は借りられなかったらしい。公共の施設を借りてほとんど手作りで経費を抑えて、こんな企画をしてくれた実行委員会には心から感謝している。

　二年前、学校に行くこともできず、各家庭を訪問した担任から渡された卒業証書を持ってきた者はさすがにいなかったけれど、ここにいる誰もが心のなかで幻になってしまったひとつの区切りを感じているのだと思う。

　イベントのメインだった「元担任からの卒業証書授与式」は全クラスが終わった。あちらこちらのテーブルはほっとしたような晴れやかな表情の同級生たちの笑い声で満たされている。

　でも、私たち三組の面々は誰もが言葉にできない切なさを噛み締めていた。