卒業 見届け人

4/4

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
夕暮れの肌寒い風でサオリは目が覚めた。 「やあ、おはようございます。新しい日が始まりましたよ。バンジーはいかがでしたか?」 男がサオリの顔を覗き込みながら声をかけた。 「あの、これ、まさか私、ここは、あの世?いえ、あれ?」 混乱するサオリに男は説明を始めた。 ここはただのバンジージャンプ場ですよ。 ごくごくありきたりな、ね。 ただ、時々、それまでの自分を卒業したい人がやって来ます。 そんな時は、取り敢えず一度、それまでの自分を卒業してもらいます。 で、あとは、この力自慢の僕がえっちらおっちらと引き上げまして、新しいその人が目覚めるのを見届けるんです。 「金具!私ちゃんと外したのに。」 「ああ、あの金具はダミーですから。ちょっとロープ長めに調整しましたが、ぎりぎり完璧でした。我ながらさすがです。」 男は輝く笑顔で教えてくれた。そして、明るく力強い声でこう言った。 「ご卒業、たいへん、おめでとうございました!」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加