最低で最悪のサプライズ

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 え……?      結婚以来大事なことはいつだって二人で話し合って決めて来たのに、その態度はないだろうと私は思った。まあ確かにこのことに関して言えば結論がどちらに転ぼうと、夫の考えに百パーセント委ねるつもりで、鼻っから反対する気はなかったけど……だけどそれにしても、あまりにもそっけないじゃないか。  急に蚊帳の外にポンと一人追いやられたみたいな……もしくは目の前の扉を鼻先でパタンと閉じられたような気分で、 私は悲しいというよりも呆気に取られてしまった。  まあ百歩譲ってとっくにそう決めていたにせよ「君はどう思う?」くらい言ってもいい場面ではないか。ましてやこの先まだまだ長く続くであろう二人の暮らしに大いに関係することなのだから。  でもまあ夫は普段から口数が多い方ではなくて仕事の話もあまりしない人だし、一人で色々考えた末のことなのだろう。私はそこで一度深呼吸をして気を取り直し、長年使い込んだ夫婦湯呑みにジョボジョボとお茶を注ぐと、それを持って夫の隣りに座り新聞を覗き込んだ。  そして 「いよいよ内閣改造ねぇ……」  と自分で言っておいて、 「ああ」  とこれまた生返事をする夫に『いやいや今したいのは内閣改造の話なんかじゃないの』と、一人で腹を立てた。    しかしそういったモヤモヤや不貞腐れた気分はいつだって長続きはせず、テレビのバラエティー番組で覚えた雑学と同じように、あっけなく翌日にはユルユルと記憶の沼の底に沈んでしまうのだ。  良いのか悪いのか、不満や怒りが長続きしないのは数少ない私の特技の一つなのである。
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