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夜の道で
後ろからなにかがついてくるような気がしてさっと振り返ったけれど、夕暮れの町の通りには誰もいなくて、少女は小首をかしげる。降り出した雨が傘をたたく音を聞き違えたかと思い、前を向いて歩き出そうとした。
でも、もしかしたら……という気がして心臓が高鳴った。
最近、学校でもウワサになっている怪現象のことがすぐに頭に浮かんだのだ。けれども、まさか、と思った。
謎の人影が追いかけてくるということだったが、不審者ではなくて怪現象というのが、そのウワサのよくわからないところだった。人なのか影なのか、はっきりしない。だから誰もが半信半疑で、ただこの世ならざるなにかに対する恐怖心だけが先走っている感じで……。
「ひっ!」
ところが、一歩をふみ出したときだった。いつの間にそこにいたのか、道の先に真っ黒い大きな影が立っていた。
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