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「どうしたの?」
六花と同じように、声のトーンを落として訊いた。
「実はわたし、きのう見たの」
「見たって……なに?」
「みんながウワサしている、あの影よ」
「ええっ!」
「シッ。声が大きい」
六花は立てた人差し指を口にあてる。
「本当なの?」
「塾の帰りにね……」
「どんなだった?」
「人の形をした影だったと思う。でも薄暗くて、よくわからなかった」
「危ないことはなかったの?」
「思いっきり走って逃げたら、逃げ切れた」
「みんなには、言わないの?」
「うん……」
六花はうなずく。あまり目立つのは苦手なのだ。
しかし単なるウワサではなく、確かな目撃証言を得られたということは、怪現象は実在するのだ。都市伝説だと思っていたけれど、そうじゃなかった。襲われたという話は聞かないとはいえ、もしなにかあったらと思うと、華凛は朝から背筋が寒くなった。
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