六年三組 新町華凛

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「どうしたの?」  六花と同じように、声のトーンを落として訊いた。 「実はわたし、きのう見たの」 「見たって……なに?」 「みんながウワサしている、あの影よ」 「ええっ!」 「シッ。声が大きい」  六花は立てた人差し指を口にあてる。 「本当なの?」 「塾の帰りにね……」 「どんなだった?」 「人の形をした影だったと思う。でも薄暗くて、よくわからなかった」 「危ないことはなかったの?」 「思いっきり走って逃げたら、逃げ切れた」 「みんなには、言わないの?」 「うん……」  六花はうなずく。あまり目立つのは苦手なのだ。  しかし単なるウワサではなく、確かな目撃証言を得られたということは、怪現象は実在するのだ。都市伝説だと思っていたけれど、そうじゃなかった。襲われたという話は聞かないとはいえ、もしなにかあったらと思うと、華凛は朝から背筋が寒くなった。
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