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同級生の多くが地元の中学校に通う予定で、友だちの財田六花もそうだった。できればいっしょの中学に通学したい華凛だったが、でもその考えを母親にはまだ話していない。積極的に拒否する理由がなかった。
「はい、今日はこれまで」
ダンスの先生がパンパンと手をたたき、生徒の前でレッスンの終了を告げる。ありがとうございました、と生徒たちが声をそろえる。そんななか華凛は、今日はあまりレッスンに身が入らなかった。気分がのらなかったのは、たぶん、六花が出会ったというあの影のせい。ダンスの練習にもどこか上の空で、どうにも動きが悪くて。
六時をすぎ、教室のある建物を出ると、日はとうに沈んで西の空だけがかろうじて赤く染まってもう暗い。年少の生徒たちには母親や年長の兄弟やらが迎えにきていた。
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