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息を切らしながら走った。そういうときにかぎって、なぜか道を通る人が一人もいない。誰かいれば怪現象も消えてなくなるだろうに――そう勝手に思って、とにかく走った。
息が続かなくなってきた。これ以上は全力で走れない。心臓がめいいっぱい激しく鼓動し、肺が酸素を求めて苦しんでいる。
交差点まで来たところでようやっと振り返ると、影はいなかった。街灯のLEDがまぶしく光を放ちはじめ、降る雨筋に細く反射している。
肩で息をしながら、逃げ切れたことに少女はほっと胸をなでおろした。
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