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ご主人様から主従関係を破棄される
「貴方達との主従契約を破棄します」
「そ、そんな・・・何故ですか?」
大豪邸の屋敷で働いていた僕達は、ある日ご主人様に呼び出されて契約破棄を言い渡された。
「お父様が事業に失敗して、借金返済のためにこの大豪邸を売り渡す事になりました。大勢の従者達をこのまま雇い続けるのは困難となりました」
「破棄された私達は、これからどうすれば?」
「手切れ金として、退職金の為に用意していた一部を渡します。その金で生活先を見付けなさい」
従者達を統括していたメイド長が僕達に小さな袋を渡してきた。中を確認すると、金貨数枚が入っていた。
僕達はその日のうちに、少ない荷物を持って大豪邸から追い出された。
「故郷に帰るか」
従者だった何名かは故郷に帰っていった。残ったのは僕の様に孤児院から引き取られたりした、身寄りがない者達だけ。
「別のお屋敷で雇ってもらえないか、商業ギルドに相談するわ」
若いメイド達ならば他の屋敷で雇ってもらえるだろう。しかし、僕達男はかなり厳しい。
「冒険者にでもなるか」
体力に自信が有る身体が大きな者は、冒険者ギルドに向かった。
小間使い程度で身体の小さい僕達には危険すぎる。立ち尽くして残った者は三名だけとなった。
「なあ、僕達で店を開かないか?」
僕は意を決して二人に話しかけた。
「俺には商才なんてないし、お前達が料理でも作るのか?」
同い年で背丈も近い一人目が答える。
「この街には料理屋が多くて、とても僕達じゃ太刀打ち出来ないよ」
お使いで街並みは良く観ているので、料理で勝負は出来ない。
「店を買うお金なんて、オイラ達の渡され金貨だけじゃ足りないよ?」
眼鏡をかけて僕達より背が低い、年下の二人目が答える。
「露天なら、貸し店舗代金を毎日銀貨二枚程度で済む。後料理は作らない」
「じゃあ何を売るんだ?」
「付与された小物さ」
「付与?」
「僕が孤児院で暮らしていた時に、冒険者になった先輩が土産話と一緒に、迷宮で手にいれた魔道具を見せてくれた事があったんだ」
僕は首にかけていたお守りを外して二人に見せる。
「既に効果が切れて使えなくなった魔道具を僕にくれたんだ。その効果は防御結界で、一定の攻撃量を防いでくれる」
「凄いな。でももう使えないんだろう?」
「うん、この魔道具はね。そこで付与なんだ。この魔道具には元は魔石が嵌め込まれていて、その魔石に結界の力が付与されていたんだ」
見せたお守りには魔石が嵌められていない。魔石に付与された力が尽き果てて壊れたからだ。
「魔石に某かの力を付与して装飾品に嵌め込めば、それは使い捨ての魔道具になるんだ」
「肝心の魔石と付与が無いじゃないか」
「魔石は魔物から抜き取られて、冒険者ギルドが買い取っている。売値は小さいものなら銅貨で済むみたいだ」
「付与は?」
「僕が出来る。一度だけ魔石を買って自分の魔力を込めてみたら、付与出来たんだ」
「効果は?」
「持久力増加」
「昔、一日中働き詰めだったのにお前だけが誰よりも遅くまで働いていた事があったな、そう言えば」
効果は一日で切れた。魔石を何度も買うと怪しまれるし一人だけ仕事量が増えるから、その後は付与しなかった。
「俺達が一緒で良いのか?」
「独りで商売なんて怖くて出来ないよ。それに交代しないと、休む時間が無くなるじゃないか」
「成る程。オイラ達は店番や魔石を買いに行ったりと、手伝える事が有るんだね」
「三人で今よりも良い暮らしを目指そう!」
手を合わせ、僕達の新しい生活はこうして始まるのだった。
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