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商売繁盛
三人部屋の宿屋を見付けて泊まり、一月分の料金を前払いした。朝食と夕食付きで、公衆浴場も近場に有るかなりの立地だ。
商業ギルドに行き、貸し店舗の代金を払って札を貰う。この札に書かれている数字と同じ店舗を一日使用出来る。
雑貨屋で小道具を揃えて、程好い穴が開いている装飾品を出店で買い漁り、冒険者ギルドで小さな魔石を大量に買う。
街の大通りから少し外れた位置に有る貸し店舗に着いた僕達は、早速準備を始める。
「俺が装飾品に魔石を嵌め込んで商品にする。客寄せも任せろ」
「オイラが店番で商品を売る。もし商品が沢山売れたら、補充の仕入れは任せて」
「僕はひたすら魔石に付与する。お昼の買い出しは休憩も予て任せて」
役割分担が決まり、僕は魔石に付与を始める。何回か付与を行うと、疲れてくるので休憩を挟みながらしていく。
ある程度商品が出来上がると、大通りに出て客寄せを始める。
「持久力増加が付与されたお守りを買いたい奴は居ないか? 迷宮や森で移動中疲れ知らずになるぞ!」
街を歩く冒険者達が発せられた声に引き寄せられて店に群がる。
「効果は何れぐらい持つんだ?」
「大体一日。次の日には魔石が壊れて効果が切れるよ」
「幾らなんだい?」
「一つ銀貨一枚。効果は多分重複しないと思うから一人につき一つずつになるかな」
「仲間の分合わせて四つくれ。魔法使いが何時も途中でバテて休憩が多かったんだ」
「毎度有り。他に買いたい人は居ますか?」
「こっちも四つだ。ウチは重戦士がいるから移動時間が短縮出来そうだしね」
「俺にもくれ、六つだ。荷物持ちが居るから休憩が少なくなるのは助かる」
あれよあれよと売れていき、瞬く間に在庫が無くなる。
「あんなに有ったのに、もう無くなったの? オイラ仕入れてくるよ」
「店番は俺がしている」
「僕はお昼を買ってくるよ。奮発して高くて美味しいの見繕ってくる」
付与出来る魔石が無いので、早めにお昼を買いに行く。嬉しい誤算だ。こんなにも需要があったなんて。
最高級の串肉や白い柔らかなパンを買い、戻ると仕入れが終わっていたので先に昼食を済ませる。何時も残り物や有り合わせで作られた食事よりも美味しかった。
その後商品を作り、もう一度呼び込みをすれば日が沈む前に全部売れてしまった。
「これが一日の稼ぎか? 銀貨何十枚有るんだよ」
「合わせて金貨十二枚ですから、銀貨は数百枚ですね」
「仕入値と諸々で金貨三枚使ったから、山分けしても一人金貨三枚。凄いね」
「良いのか? 俺達手伝い程度なんだぞ」
「昨日のウチに決めた事だろう? 一人で店は回せないし、役割分担で金額が変わると、ややこしくなるだけだから」
「明日は、街道に近い大通りの貸し店舗にしましょう。行商人も欲しがっていましたから、馬車通りからの客足も延びます」
店を早めに畳んで、大量に仕入れる為の鞄と背負い袋を買いに行く。帰った宿屋で夕食の他に別料金の果実や飲み物を注文して乾杯した。
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