つぐみのこえ

4/29
前へ
/29ページ
次へ
 こういう朝を、私たちは何回も、何十回も、何百回も過ごしてきた。  何気ない日常の中には、いつもユウがいて、私は中学3年生になった。  これから学校に行って、寒い体育館で合唱をして、卒業証書を受け取ったら、私は中学生じゃなくなる。  もうすぐ、高校生になる。  だから、私は今日、ユウに伝えようと決めていた。 「あのね、ユウ」  窓ガラスの向こうを見つめたまま、ひとりごとみたいに話しかけると、ユウがこっちを見ているのが視界の端に入った。  きっと、いつもの優しい笑顔で、私を見ている。  ユウは、そういう人だから。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加