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「校長式辞」
副校長の司会の言葉に、卒業生全員が立ち上がる。ザッと一つの音が聞こえ、6年生全員、校長が舞台の上に上がるのを息を殺して静かに待つ。
第三森川小学校の卒業式。この学校の校長は変わり者で有名な人物ではあったが、児童や教職員から慕われていた。何より変わっているのは全校朝会。以前、校長から教職員に向けて「日々楽しい授業を心掛けている先生方に負けないように」全校朝会で魅せますよ、と言っていた。長くつまらない校長の話という概念を壊したいようで、その言葉通り、見事にぶち壊して見せた。
ある日の全校朝会では、朝礼台の上で挨拶をした次の瞬間、鳩を出現させて飛ばして見せた。当然児童は前のめりに校長に釘付け。別の日には、戦国時代の侍大将のような格好で、またある時は冬の寒い日に上半身裸になって腕立て伏せを始めたこともあった。肝心な話の内容が入っているかは別として、子どもたちは毎週、全校朝会を楽しみにしていた。憂鬱な月曜日の朝を、わくわくして学校に行き、校庭に出る。
「校長先生のお話」
そう言われて朝礼台に上がる校長。用意したネタで心をつかむ。
「でたー」
子どもたちは校長が大好きだった。
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