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10 女王の命令
「そんなもん、ちょっとの知恵があればすぐわかるわよ」
「どういう意味です?」
「まず会議が増える。軍務大臣なんか寝る暇がないってぼやいているわ。それにお金の動き。多量の武器に多量の食糧。それに薪や炭。情報統制って言葉知らないのかしらね、まったく」
正直驚いた。たしかに戦争準備と取られても仕方ない動きだ。
「た、確かにそう見えないこともありませんがしかし!」
「おおっぴらに兵や馬を集めるに至ってはもう救いようがないわね」
「すいません…」
わたしが悪いわけじゃないけど、なんだかすまない気持ちになった。
「べつにあんたが悪いわけじゃないわ。ただ、こんどの戦争には行かないこと。これは女王命令よ」
「そ、それはさすがに女王さまのご命令でも承服できません!騎士は戦場に出て戦うのが本分です。いくら女王さまのご命令でもそれだけは聞けません!」
もういい加減こいつのわがままにつきあうのはごめんだ。このクソビッチはわたしをあくまでオモチャにしようと考えているだけなのだ。戦争に行って死なれでもしたら、弄べるオモチャがなくなるからな。
「そう言うと思ったわ。だからあんたを近衛の師団長にすることにしたの。どう、これは出世よ?がんばってねー」
「き、汚ねえっ!」
いけね、つい言葉に出ちゃった。だがそれは本当に汚いやり方だ。近衛は女王直属の親衛隊だ。つまり女王から離れられないのだ。それはつまり、この王都に敵が押し寄せてこない限り、わたしに戦う場所はない、ということだ。
「これであんたは戦場には行けなくなった。よかったわねー、命拾いよ。うふふふ」
わたしは、女王の顔が悪魔に見えた。いや、やっぱりただのクソビッチだ。
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