9 失恋は蜜の味(他人の)

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9 失恋は蜜の味(他人の)

ライシャは真っ赤になってわなわなと震えていた。わたしを恐ろしいほどのきつい目でにらみ、そして言った。 「陛下、急に気分が悪くなって…申し訳ありませんがおいとまを!」 そう言ってライシャは走りだしてしまった。これはいけない! 「ちょ、ちょっと待って!」 「オホンオホン」 「…女王さま」 バカ―っという叫び声が聞こえてきた。ああ、もうおしまいだ。わたしの恋は終わった…。いまになって考えれば、この展開は読めたはずだ。この女王のビッチな性格じゃ、必ずこういうことが起きるって。しかしなんで秘密がバレたんだろう。気をつけていたはずなんだけど…。 「ふふ、納得いかないって顔ね」 「当り前じゃないですか。一生の伴侶と考えていたんですよ。それを…」 女王はまたニッコリとほほ笑んだ。忌々しいほどいい笑顔だった。そんなにひとの不幸が楽しいか、このクソビッチめが。 「一生の伴侶ねえ…。まあ、あんたは人生経験も浅いし、あんな女に引っかかっちゃうのも無理はないけどね。あーおもしろかった」 なにいってんだこいつ?おもしろいだと?人生経験?あんな女?わたしが引っ掛かったのはおまえじゃないか!順風満帆だったわたしの人生引っ掻き回しているのはおまえだろこのクソビッチ! 「わたしもこの辺でおいとまさせていただけないでしょうか?戦役での疲れと申しましょうか…いささか気分が…」 みんなお前のせいだからな。はやくライシャのところに行って謝らなければ。そして伝えるんだ。みんなこれはクソビッチ女王の陰謀だと! 「まあ待ってよ。話は変わるけど、あなたこんどの戦役に出るってホント?」 「あの、それは…」 なんだいきなり?それがどうしたんだ。わたしははやくライシャのもとに行きたいんだ!いいからそこをどいてくれ! 「女王が聞いてんのよ?答えなさいよ」 「ローデンシュルト王国のヒルトガイム城を攻めるという話ですか?どこでお聞きになったんです?まだ秘密なはずですが」 驚いた。ライシャのこともそうだけど、こいつ色々なことを知っている。いったいどういうわけだ?
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