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11 騎士の逆襲
近衛なんかになったらもう女王の言いなりだ。まして師団長なんかじゃなおさらだ。そうだな…ここは受けるふりをして、策を練るか…。
「わかりました。このポール・デュバル、謹んでお受けいたします」
「期待してるわー。さあ、こんどは何して…うふふふ、夢広がるわー」
やっぱりか。このわたしをなぶりつくすつもりか。いや、いまに見ていろ。絶対ぎゃふんと言わせてやる。
それからわたしは知り合いの貴族をまわり、策を練った。驚いたのは一番力を貸してくれなさそうだった叔父が、なぜか乗り気になってくれたことだ。いままでさんざん迷惑かけられたが、やっぱり親戚なんだなあと、わたしは少し涙が出る思いだった。
「首尾はいかがでしたか?」
執事のセバスが不安そうにそう聞いてきた。
「なかなかいいよ。レギュウス伯爵が手を回してくれることになった。彼の父上は先代の王のいとこだし、国の中でも力を持っているからね」
「レギュウスさまの父君は素行がよろしくなく、本来なら王位の継承もあったはずなのにそれが元老院に反対され伯爵のまま留め置かれたと。先代王と元老院をずいぶんと恨んでいたと聞いております。ならなおのことそのご子息も…」
なかなか事情通だな、うちの執事も。
「伯爵に限ってはそういうことはない。わたしたちは親友なのだからな」
「ならおよろしいのですが…」
「心配性だなセバスも」
「それが仕事ですから。もう坊っちゃんのひとの好さには子供のころからハラハラさせられどおしでして…」
「子供の頃の話はいい」
「これは失礼をば」
「まあいいさ。ついでに言うが、こいつは驚くなよ?軍務大臣もわたしの味方だ」
「アンドリューさまが?それはいったい…」
軍務大臣のアンドリュー・ギスバストは侯爵でこの国では女王に次ぐ権力を持っている。それは宰相や元老院議員をも黙らせるほどで、彼の一声で国が動くと言われる。
もうこれでわたしは近衛に異動、などということはなくなった。軍務については侯爵が決定権を持つ。たとえ女王といえど口出しできないのだ。ざまあ見ろ、クソビッチめ!
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